罪数処理

事例

Xは、Aを殺す目的でA宅の家の塀を超え、A宅の鍵を破壊し、寝室で眠るAの胸をナイフで刺した。この時、Aはパジャマを着ていた為、XはAのパジャマも損壊している。この時、Xはいかなる罪で処断されるか。

答案

Xは、当該一連の行為でいかなる罪を犯しているか。Xは、犯罪事実を認識・認容し、管理者の意思に反した目的で、Aの囲繞地に侵入している点で住居侵入罪(130条)が成立する。

(住居侵入等)第130条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

 さらに、XはA宅の鍵を損壊しているという点で、建造物損壊罪(260条)が成立する。

(建造物等損壊及び同致死傷)第260条 他人の建造物又は艦船を損壊した者は、五年以下の懲役に処する。よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

 また、Aは寝室で眠るAのパジャマを損壊し、その上Aを刺殺している。したがって、Aのパジャマに対する器物損壊罪(261条)とAに対する殺人罪(199条)が成立する。

(器物損壊等)第261条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

(殺人)第199条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

 Xは、合わせて4つの罪に跨った犯罪行為を犯しているが、Xはいかなる罪で処断されるか。

 Xが行った住居侵入罪(130条)、建造物損壊罪(260条)、器物損壊罪(261条)および殺人罪(199条)は手段結果の関係にあるから牽連犯(刑法54条1項後段)となり、科刑上一罪となる。

(一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理)第54条
 一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
 第四十九条第二項の規定は、前項の場合にも、適用する。

 したがって、Aは当該4つの罪の中で最も重たい殺人罪(199条)によって処断される。

メモ

手順1 牽連犯の検討

住居侵入罪・文書偽造からの偽造文書行使罪である場合は必ず牽連犯

住居侵入罪(or文書偽造)と〇〇罪は手段結果の関係にあるから牽連犯(刑法54条1項後段)となる。

手順2 観念的競合の検討

1つ行為で罪名が発生している場合には観念的競合を疑う。

〇〇という1つの行為で〇〇罪と〇〇罪が成立しているので、観念的競合(刑法54条1項前段)となる。

手順3 包括一罪の検討

法益侵害や行為から一体性が認められるかどうか。

〇〇罪と△△罪について、両罪の法益と行為より一体性が認められるから、包括一罪として〇〇罪は吸収され、重い罪である△△罪のみが成立する。

手順4 併合罪の検討

手順1~3によって満たされない場合は、併合罪が成立する場合がある。(よくわからん)